鶴岡真弓『黄金と生命 時間と錬金の人類史』(講談社、2007年4月20日)

金属との人間の出会いから、バーチャル化した貨幣の時代である現代まで、金と人間との想像力における交渉を描く壮大な人類史。人間の技術や知は、死と生命の貧しさを超克する生命時間への干渉/支配だという視点は非常に興味深いものだ。錬金術は地中で成長する金属の生命時間を支配することによって、生命を延長し支配するエリクシールや金を手に入れる試みであるともに、農耕は、放っておけば極相へと移行する植物世界の時間に干渉する技術なのだという。この骨太の軸を使って、人類史を大きく整理し提示する本書を読む快楽は大きいものだ。学術書としてどうということは置いて、数多くの文献を渉猟して描き出されたもう一つの人類史によってインスピレーションを与える一冊。

今日はここまで。ちなみに役立つ度では、宮台本とNHKスペシャルが群を抜いています。